トールキン 旅のはじまり
映画『トールキン 旅のはじまり』を鑑賞しました。以下、ネタバレ込みの感想です。
監督のトールキンとトールキン作品への愛情、PJ映画へのリスペクトが端々に感じられる、良い作品でした。あのシーンは! というのがあちこちにあり、まだ気が付いていない部分にも監督からトールキンファンへのほのめかしがたくさんありそうな…。
創作する人なら観るべき、との紹介を見かけたのですが、もっと広く、物語が好きな人、創作が好きな人なら誰にでもおすすめの作品だと思います。
台詞、言語の一つ一つが美しかったですし、落ち着いた色彩の画面や音楽が調和していました。
ローラ・ドネリー演じるメイベルが子どもたちのために朗読するシグルズと竜の物語は、影絵がメイベルの活き活きとした台詞とあいまって劇的な効果がありましたし、ハリー・ギルビーの少年期のトールキンの暗誦の声音もまた美しい。
リリー・コリンズのエディスが面白がって口にする「セラードア」を発展させるニコラス・ホルト、酔っ払ってエルフ語を喚くニコラス・ホルト、ミドルアースとつぶやくニコラス・ホルト…。
ライト教授の朗々たる語りはサー・デレク・ジャコビの本領発揮でした。「フィンランド語から盗んだ」云々のやり取りを聞いて気がついたのですが、監督はフィンランド人だから、母国語がクウェンヤのモデルになってるんですよね…うらやましい。
フランシス司祭もロマンスの憎まれ役に留まらない面を見せていて良かったです。
そして何と言ってもT.C.B.S.のメンバーがたいへん魅惑的でした。普段は朗らかに振る舞うも、ここぞと言う時には厳格な父親に立ち向かっていくロバート、友愛に満ちた眼差しが素敵なジェフリー、いたずらっぽいクリストファー、言語に関しては譲ることができない頑固なトールキン。4人とも少年期と青年期を演じた役者で印象が変わらなくて驚きました。みんなとってもよかったので満足〜と言いたいところですが、ワイズマンの見せ場はもうちょっとほしかったです。ヘルへイマ!
最近鑑賞した2本の伝記映画、『ボヘミアンラプソディ』と『ロケットマン』両方とも楽しく観たのですが、起きたことをただ順繰りに追っていく構成ではなく、特に『ロケットマン』はファンタジーなシーンが面白かったので、『トールキン』もやっぱりただ伝記の再現じゃない、物語のような部分を楽しめてよかったです。良い作品は他の作品の鑑賞に良い影響を与えることがあります。
印象深かったのは、T.C.B.S.のメンバーと音楽の話で盛り上がりかけたエディスをトールキンが強引に連れ帰った後のシーン。鬱屈した生活に訪れた喜び―音楽を愛する同志との会話―をむりやり打ち切られたエディスの怒りが爆発していました。あなたまで私を軽んじるのか、という悲しみもあったかな。感情を顕にしたエディスはとても魅力的で、ルーシエンの気高さだけでなくエオウィンの悲壮さを思い起こします。
謝罪からの舞台裏のシーンもロマンチックで良かったです。こっそりジャムをなめたり通行人に角砂糖を投げる2人はホビット的で可愛らしかったです。
ソンムの塹壕で現実と幻想が交錯するシーンは創造者たるトールキンの負った捨てられない荷物のような感じがとてもよかったですね。従卒の名前が直球で、映画館の暗がりで微笑んでしまいました。
でもやっぱり少し物語と被せすぎかなあと言うモヤモヤもあり、終盤のジェフリーの母親との会話がよすぎたので帳消しになってしまった感じもあり…。構成がうまいんだろうなと思いました。知らんけど。
最後の最後までファンを喜ばせるぞという監督の気持ちが伝わってくる、良い映画でした。
心斎橋ビッグステップが好き
そんなに頻繁には行けないけれど、好きな場所なんです。
イップ・マン継承を観た( ^ω^)詠春拳凄かった〜
— もるあき (@momomo1232) 2017年5月10日
ロードオブザリングスとホビットのピンボールもあそんできたよ
ビッグステップは円筒形のエレベーターとか曲がってるエスカレーターが未来ぽくてテンション上がります pic.twitter.com/yfZFXdQtAg
心斎橋のビッグステップ(ビックステップ?)好きなんだよね…シネマートもあるしトイレきれいだしサイゼもあるしピンボールでも遊べる…ロードオブザリングプレイして来た…GotGの新台入ってた
— もるあき (@momomo1232) 2019年3月30日
エレベーターとわさわさグリーン生えてるのがレトロフューチャーですごい好き(サビです) pic.twitter.com/fldkBoxRlC
『妖精物語について』雑感
TolkienReadingDayによせて、はしりがき。
2018年5月に京都で開催されたエルフ語講座のアフターで、トールキン教授の従軍体験がいかに創作に影響を及ぼしたか、というテーマが語られ、その際に読書を勧められていたのがトールキン教授のエッセイ『妖精物語について』である。私はこの話題には参加できなかったものの興味を抱き、帰宅して早速本を注文したのだった。
以下に覚え書きを記す。綴りや年代等間違っていたら教えてください。(-"-;)
・入手しやすい(今回読んだのはこちら)
『妖精物語について ファンタジーの世界』
評論社/2003年/猪熊葉子先生訳
エッセイ「妖精物語について」
短編「ニグルの木の葉」
詩「神話の創造」
https://iss.ndl.go.jp/sp/show/R100000002-I000004310057-00/
・入手はむずかしい
『ファンタジーの世界――妖精物語について』
エッセイ「妖精物語について」
https://iss.ndl.go.jp/sp/show/R100000002-I000001256012-00/
評論社版を読んでいるのであれば、こちらを読む必要はない?
『妖精物語の国へ』
筑摩書房/2003年/杉山洋子先生訳
エッセイ「妖精物語について」
詩「神話を創る」
詩劇「ビュルフトエルムの息子ビュルフトノスの帰還」
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480038302/
出版社在庫なし
「ニグルの木の葉」は『妖精物語について ファンタジーの世界』と『農夫ジャイルズの冒険 : トールキン小品集』(トールキン小品集が改題された)に収録。
・原書
"On Fairy-Stories" (妖精物語について)
1938年、セント・アンドリュース大学での講演
アンドリュー・ラング記念講演のひとつとして書かれる。
1947年、『チャールズ・ウイリアムズ記念論文集』に増補版が収録、
1964年、"Leaf by Niggle" (ニグルの木の葉)を加えた"Tree and Leaf"出版。
1988年、"Mythopoeia"(神話の創造)を加えた"TREE AND LEAF"出版。クリストファー教授に感謝。
本の内容については語れるほど読み込めていないので、我が旅路について語る。
このエッセイはホビットが出版されてから指輪物語が世に出るまでの時期に書かれた。物語の成立に関心のある人は指輪物語の次に読むのにいいかもしれない。
一章の「妖精物語」でトールキン教授は当時フェアリーストーリーと何もかも一緒くたに他称されていた物語たちがはたしてほんとうに「妖精物語」と言えるものであるかどうか、ジャンル分けの篩にかけていく。
私の読書の道のりが困難だったのは、この篩にかけられた、当時広く読まれていた冒険物語、神話、SF小説、寓話、夢物語等々についての知識がなく、本文と原註、訳註とをひっきりなしに行ったり来たりしなければならず、疲弊したからである。今にして思えば、この章の註釈部分はごく短いのだからコピーを取るなりスマートフォンで写真に取るなりすればすこしは楽だったのではなかったか。もちろん書写しても良い。
二章の「起源」で物語のスープと骨という概念が出てきてからは俄然面白くなり、調子が悪くなければ毎日数十ページのペースで最後まで読み進められた。長さや割合こそ違うものの、これはまったく『指輪物語』の「ホビットについて」と同じ、はじまりの部分が読みにくい罠である。(個人の感想です)
読書中メモを清書。
・知らない書名やキャラクターの名前の洪水の中に雷神トール(ソー)の名前が出てくるとホッとする。
・『ガチョウ番の娘』(グリム童話?)読みたい。読んだことがあるような気もするが、記憶が他の作品とごちゃごちゃになっている。
・「しかし、私は「このおもちゃは、十七歳から七十歳までのお子さまがたを楽しませるでしょう」という言葉で始まる新しい模型自動車の誇大な宣伝広告を見かけたことはない。」(子どもたちP73)現代ならありそう。
・「人間は準創造者であり、屈折した光線でありまして、
ただの白色も、その人を通せば、
多くの色となって分れ出るかと思えば、それらはさまざまな生きたもののかたちのなかで、絶えることなく混ぜあわされ、心から心へうつっていくのです。」(空想P112)白の方がよかったと言われた万色のサルマンについて考えたい。
・「逃避」という言葉が今日でもネガティブなイメージを持っているが、けしてそうではない。
・「それに、人造物としての屋根は、伝説のなかにあらわれる天の円蓋(えんがい)ほどに人を刺激しない。」(回復、逃避、眺めP129)天の円蓋は教授のときめきなのかもしれない。
・次に読みたい
『トールキンによる福音書』、従軍経験について知りたいので『トールキン 或る伝記』、ルイスも気になるのでインクリングズ関係? 指輪物語ガイドも確認したいし、初心にかえってホビット研究本も読みたい。
アフター覚え書き
2019年3月のエルフ語講座のアフターにて、『丕緒の鳥 十二国記』(新潮社/2013円/小野不由美)に収録の短編はファンタジーであるのか? という話題がちらりと出たのが興味深かった。(途中から聞き始めたので正確性に欠けるが、「最近の十二国記」というような言い方だったように思う)
この時会話にあがったのはおそらくジャンル分けの話だと思うのだが、舞台こそ異世界ではあるものの、そこで起こる出来事はあまりに現実世界を反映しすぎている、戴王の話であろう新刊が待ち遠しい、とまあ、そんな感じのとりとめのない話だった。(酒席での話なので勘違いや記憶違いなどありましたら申し訳ありません)
確かに上記の短編小説、特に「落照の獄」は読者を夢から覚ましこそすれ傷を癒やしてくれる逃避先としては些か厳しい状況が描かれている。読み物としてはたいへん面白く、他の三編に希望がないわけではない上にその「希望」が希望として信じられている状況こそが読者である私にとっても喜びと励みになっているのだが…。
ファンタジーにもリアリティや緻密さがある方が好ましい反面、憧憬を誘う壮大さや美麗さを備えた逃避先でもあってほしい気持ちもある。シリーズものの長編にあのような話を組み込むのは難しいだろうから短編でこそ書きえた話なのだろうなあ、などと考えを巡らせたりもする。要は皆新刊が待ち遠しいのである。
偶々『妖精物語について』を読み終えたばかりの時期にこういう話ができ、そこからまた何かしら考えることができてよかった。この記事も偶然にも京都エルフ語講座第一回のアフターから始まり第二回のアフターで締められたので、なんとなくまとまった感がある。
エルフ語講座を担当してくださった伊藤盡先生、講座の開催に尽力してくださったNHK文化センター京都教室の今田翔子様、アフター主催のel様、トールキンのこと・ファンタジーのこと様々お話をしてくださった参加者の皆様に感謝いたします。
読書ログ
トールキン本の備忘録。スマホから写真を貼ると縦長画像が倒れてしまうため、ツイッターに投稿→貼り付け。
角川文芸出版
2014年01月23日
コリー・オルセン
川上 純子 訳
『ホビット』の解説本。2019年現在、入手しやすく読みやすいおすすめの一冊です。訳者あとがきをそのまま載せたいぐらいなんですが、読者が読みすごしてしまいがちな部分まで丁寧に『ホビット』(『ホビットの冒険』)を解説してあります。たぶん自分がホビットの解説しろって言われたら『指輪物語』や『シルマリルの物語』だとかトールキン教授の人生とか説明したくなると思うんですが、ストイックに『ホビット』からの引用に終始していて、読者の導き方がとてもいいんですね。そりゃ本にしよ!って言われますわ(元はポッドキャストで配信してたことから声がかかった)
今なんだかとてもテンションが高いのでこの文章は書き直すかもしれず…。
◆
『この一冊ですべてがわかる!指輪物語ガイドブック』
2002年3月15日 第1刷
イアン・ローソン/ダニエル・オブライエン/キース・マーシャル
仁保真佐子 訳
"WORLD OF THE RINGS The Unauthorized Guide to the Work of J.R.R. Tolkien "
イースト・プレス社の指輪物語ガイドブック
— もるあき (@momomo1232) 2019年1月31日
『終わらざりし物語』出版前の本なので日本語タイトルが載ってない以外は映画から入った人にちょうどいい感じ
バクシ版のこと好きすぎて3章で急に早口になってるのが面白かった
無闇に持ち上げるのでもなくダメなところは批判しつつ見どころを紹介しまくり pic.twitter.com/u5rzp2683m
何なら1作目公開後のPJ版の解説より熱が入ってたような…これを踏まえてもう一度バクシ版を観たくなった
— もるあき (@momomo1232) 2019年1月31日
◆
2001年10月1日
マイケル・コーレン
井辻朱美 訳
"J.R.R. Tolkien: The Man Who Created the Lord of the Rings"
Michael Coren
sayawenさんのトールキン探訪記を読むのに役立つと思い『トールキン 『指輪物語』を創った男』を読みました😌
— もるあき (@momomo1232) 2018年12月26日
『或る伝記』は字が細かくて放置していたのですが、こちらはとても読みやすいです
訳者の井辻氏も指摘されている通りやや物語としてまとまりすぎかもですが😅https://t.co/2lNjXtJ1L4 pic.twitter.com/OAyKRKrUx1
マイケル・コーレン氏のこういう姿勢はめちゃ心に刻みたい pic.twitter.com/52tMtLcZ85
— もるあき (@momomo1232) 2018年12月26日
映画が知らない街に連れて行ってくれるという話
かつて『ホビット 竜に奪われた王国』の先行上映(※日本だけが公開時期が異様に極端に世界中ただ一国遅かった)を観に台湾へ行った私ですが、友人はまだ公開規模の小さかった時期の『この世界の片隅に』を愛媛から広島までフェリーに乗って観に行ってくれました。
子供の頃、小さな映画館で「まんがまつり」を観て、その劇場でかからない映画は梅田に連れて行ってもらって観ていました。やがて大型スーパーが進出して来るとシネコンというものが我が市内にも隣の市にもできて、たいていの作品はその範囲で観に行けるようになりました。(実写『ピンポン』はテアトル梅田に観に行きました)
およそ12年前に松本大洋先生原作の『鉄コン筋クリート』の映画が公開されましたが、地元では上映されないそれを私は観に行けるかどうか自信がありませんでした。冬は特に寒さと気温差に体力が削られ精神も低調になり時期的に遠くへ出かけるのが難しいことがあるのです。(※梅雨にも夏の暑さにも負ける)
大好きな原作、クロの声はやはり大好きな嵐メンバーの二宮和也さん…しかし…好きだからこそ不安になった、そういう部分もありました。マクドのポテトのイクラがけのように、好きなもの同士を掛け合わせたからと言っておいしくいただけるとは限りません。ポテトはしょっぱくなりすぎるしイクラは煮えてしまう。もし自分の好きな作品がそうなってしまったらどうしよう? ぐずぐずしているうちに上映映画館は減っていきます。
そうこうしているうちに確か年末、公開後の深夜にテレビ特集がありました。記憶がだいぶ怪しいですが、そこで流れた本編映像に参ってしまって…目が眩むような青い空とゴチャゴチャに描き込まれた色とりどりの町並み、カメラワーク、アクション…。夢中でキャプチャ(※スクリーンショット)しまくりました。
これは必ず観に行かなくてはいけない、と休日と行ける映画館を調べたところ、スケジュールが合うのは梅田でさえなく、どこか知らない大阪の街の行ったことのない映画館でした。これ以前から時折一人で嵐やV6のコンサートや舞台には行っていたのですが、初めて行く会場では誰かと一緒に入るか席は離れていても終演後に同じ公演を見た人たちと食事やお茶をするのが常でしたので、初めて行く場所で最初から最後まで一人きりというのは外出のためのモチベーションを維持できるかどうか不安でした。ましてやコンサートのようにどうしてもこの日この時間に行かなくてはならないと決まっているわけでもなく…。
キャプチャ画像を見ながら自分を叱咤激励し、電車の乗り方を調べました。ずいぶん遠い映画館で、上映時間もネットがなければ調べるのは無理だったかもしれません。そんな劇的な展開にも関わらず駅名も映画館がどんなだったかも覚えていませんが、ようやくたどりついた映画館で『鉄コン筋クリート』を鑑賞できた私は深い感動にむせび泣きました。期待していたクロだけでなくシロ役の蒼井優さんや他のキャラクターの演技も作画も構成も何もかも素晴らしかったです。その後アニメーション映画のDVDを初めて購入するほど好きになりました。
それにしてもどこの映画館に行ったんだろう。今でもその映画館はあるのだろうか…。
こうして私は映画によって見知らぬ街を訪れたのですが、この時は映画と、無事に行って帰れるかで頭がいっぱいで、せっかく訪れた知らない街を探索したり、何か地元のおいしいものを食べたり…という余裕はいっさいなく、帰りの電車でお腹を減らしてぐったりしていました。
そんな些かしょっぱい思い出ではありますが、その後かなり期間をあけて前述の通り台湾に行ったりアンコール上映のためにあちこちの映画館に行く礎を作ってくれたのが『鉄コン筋クリート』でした。当時の私はコンサートのための遠征はしていたのに、映画のために一人で遠出するなんて考えたこともなかったのです。そのことを私は今日までずっと忘れていました。それにしても、原作をすごく好きとは言え、クロの声をニノがあてていなかったら観に行ったかはわからないですね。ニノ、ありがとう。
そして、映画『鉄コン筋クリート』からおよそ10年、原作は大好きだし主人公の声をあてる人も好きだけど、はたして大丈夫かな…とドキドキしながらも観に行ったのが、こうの史代先生原作、のんさん主演の『この世界の片隅に』。この素晴らしい作品の監督補を務められた浦谷千恵さんはかつて『鉄コン筋クリート』で作画監督の重責を担っていたのでした。
かば吉さんの嵐・二宮さんの思い出ツイート
いきなり思い出話
— かば吉 映画「この世界の片隅に」 制作中 (@kabakabakababa) 2019年1月29日
二宮和也さんと嵐を応援していこうと思ったキッカケはアニメ映画「鉄コン筋クリート」で何度か二宮さんとお会いする事があったからです
一緒に仕事した者がその人のファンになるのだから
ほんとにステキな人だという事になると思います。
それはのんちゃんも同じです。
ツリーで続きます。
漫画もアニメもアイドルも映画もすべて私の人生を支え、手を引いてくれたものです。それらに関わるすべての人たちに幸いが訪れますようお祈り申し上げます。
2019年1月30日
JOJO展大阪行ってきました
大阪港駅を出て海遊館へ至る道を歩いていると外国人観光客がJOJO展の袋を持っていたので、俺も早く観たいぜ! という気持ちが高まっていくのを感じました。でっかいDioのポスターが見えてきて写真を撮っている人もいて、めちゃくちゃ寒くて曇っていたけど晴れやかな気分に。音声ガイドを首から提げていざ行かん。
ジョジョは好きだけど最近はそこまで熱を入れて追いかけてもいないし観に行ってもいいものかと迷ってて行くのが遅くなったわけなのですが、他の展示では堪えていたのにジョジョリオンの鳩ちゃんのキックシーンの原画を見たら興奮してウォッみたいな声が出てしまったので観に行って良かったです。あのエピソードは鳩ちゃんが実に素晴らしい。
今回ハートを撃ち抜かれたのはカーズ様のカラー絵。顔アップで横に小さいジョセフが跳んでるカットで、ジョセフは複雑な模様のカラフルな服を着ているのに対しカーズ様は顔の周りを黒い布で覆いカットの大きな宝石を数点飾っているだけなのですが、カーズ様は宝石よりも美しい…。ほとんどモノクロで薄い琥珀色の陰影がスッと塗られているただそれだけでカーズ様の残酷なまでの美が際立っていました…おお…。
いわゆるオラオラシーンでパンチの軌道のペンタッチが良かったですね。ガイドによるとオラオラとか無駄無駄のシーンの集中線やトーン以外は自分で楽しんで描いておられるそうです。
トーンと言えばジョセフ対カーズ戦で噴火した時の溶岩の粘っこい感じが良かった…先生の描かれたカーズ様とジョセフはもちろん素晴らしいのですが、アシスタントさんもこういう凄い技術で漫画の質を上げているのですよね。原稿には青鉛筆の指示が入っていました。
身上調査書は全キャラ分読みたい世界だった…。
原画展のために描かれた「裏切り者は常にいる」も良かったです! 定助の顔めっちゃでかくて嬉しい! 由花子さんのスカートの裾がきれいだったなァ〜。
カーズ様(ジョセフとシーザー)のTシャツを買って帰りました。
本当は仙台でやった時に行けたら良かったんですけど、自分が行けるかどうかは昨日までわからなかったけど大阪に来るって聞いた時とても嬉しかったです。
JOJO展
「特別展 西行」和歌山県立博物館
今月(2018年11月)25日まで和歌山県立博物館(https://www.hakubutu.wakayama-c.ed.jp/saigyou/frameset.htm)で「特別展 西行」展が開催中です。私は大河ドラマ『平清盛』で井浦新さん演じる崇徳院が好きだったのですが、放映当時のイベントや展覧会ましてや白峯寺へ行く機会もついぞなかったのです。今になって比較的気軽に行ける和歌山県立博物館で西行の特集がというのも何かの縁と思い、関連展示はあるかなという下心を抱いて訪れたのでした。
記憶力がザルなので今検索して確認しましたが、西行はドラマの中では佐藤義清の俗名で若き清盛の同僚である北面の武士としての出番が主だったはず。かなり最初の方ですね。出家してからは時々ふらりと出てきて乱れた世を嘆いていた…? どうだったかな…? ほぼ「願わくは花の下にて」の記憶しかない状態で観覧に挑みました。
まず西行法師の経歴(印刷したものが配布されていて親切)と活躍した土地の説明があり、展示室に入ったすぐの場所に西行坐像、大きめの像が展示してあり、なるほど西行さんはこういう人だったのか…と思いきや、説明を見、音声ガイド(200円という安さ)を聞くには、江戸時代に「今西行」と呼ばれた歌人にして西行研究者の似雲(ジウン)という僧侶が厳しい面影の高僧の像を当時流布していた西行のイメージに合うのでこれを西行像とした、みたいな話で、びっくりしました。江戸時代に西行をイメージして彫られた像でもなく、他の人物である可能性が高い、とある僧侶の像を西行ということにしたと。もう一回書いてみたけどよくわからないですねこれ。ただわかるのは江戸時代に西行さんにアツいファンがついていた、そういうことです。
続いてはちゃんと西行さんとして作られた像と西行さんとして描かれた姿絵です。絵の上の方には西行さんの歌も書いてあるのが洒落てます。とんちの効いた絵もあって面白かったです。
西行さんの歌が最初に歌集に載った時は有名じゃなかったので詠み人知らずとされたとか、「世を捨つる…」が「身を捨つる…」に変えられたとか散々でしたが、やがて新古今和歌集には94首も載るようになったよっていう展示がありました。でもこの最初に載った詞花和歌集は崇徳院が命じて編纂されたものだとか…初めて西行さんの才能を見出したのは崇徳上皇なの…? 藤原顕輔かも…? どうせ名前載せてもわからないから匿名でいいでしょとか載せる人が勝手に改変とか平安時代からあったんだな…こわ…。そんな感じで歌のことなどはわからないものの、けっこう楽しんで見ました。
しかし本人が詠んだ歌も多いしけっこうな数の歌集を編み歌合もプロデュースしている…? 才能に溢れすぎてて逆に凄さがよくわからないんですが。
西行さんが書いた手紙もありました。戦で人が死ぬことがおびただしいのを嘆いていたり、出家した理由とも繋がってるんでしょうかしらね。
そして西行の家族の話や、有職故実に詳しかったので引用元にされた話など。蹴鞠にも詳しかった。
そんな何の不自由もない暮らしなのに突然出家したのでふしぎ! みたいなことを藤原頼長の台記にも書かれていたんですね。理由は友人の死とか高貴な人に失恋したとか諸説あります。
妻も娘さんも出家して心安らかに暮らせたのかなあ、世の中が乱れてたからどうだろう。おのれ清盛め…。
そして崇徳上皇像ですよ。像といっても木彫りのそれではなく絵です。思わず拝む。京都からわざわざ和歌山まで来ていただいてありがたいなあ…。展示資料一覧を見るに、前期展示にはなかったんですね。何も調べないでぐずぐずしていただけなんですが後期に行ってよかったです本当に。
紀伊国の池田荘の佐藤氏の記録の展示など。訴え書きとか昔の地図とか目録とか。平重盛が建立したお寺にあった観音像の展示もあって心が満たされました。ドラマでは窪田正孝さんの演技が凄まじかったですね。
文化財を紹介する流れで海神社(http://wakayama-jinjacho.or.jp/jdb/sys/user/GetWjtTbl.php?JinjyaNo=3022)の脇差・銘国次が見られたのがよかったです。柾目肌がしっかり見えて帽子は反り返りっていうのかな、ぼわーっと沸えていました。用語の使い方合ってるかわからないけど…。銘も読める範囲で「□池田荘海上ツ(?)□國次□」的な感じでした。京のかたな展で刀剣の見方を少しおぼえました。展示を見終わってから気がついたのですが、和歌山県立博物館では単眼鏡の貸出もしているそうです。いきなり買うには高価なものなので次の機会には試してみたいです。
高野山の図絵に西行桜があるよーとか、今このさくらそのものはないけど代々植えてるんだよーとか。
西行が霊夢で見た阿弥陀如来と脇侍を模刻した像があり、ここでも西行さんの新しい才能を知ることになりました。えっと本人が彫ったのですか…? これらを…? 西行 霊夢で検索してもゲームのキャラが出てくるんですが…。彫師に指示して作らせたのかな、それでも大した才能ですが。詳しく知りたいけど西行さんの歌人以外の部分にフォーカスした本はどれを読めばいいのかしら。
この霊夢のくだりが江戸時代のアツい西行ファンこと似雲さんがリスペクトゆえに西行さんの旅路を追跡行脚してついに弘川寺(http://www.town.kanan.osaka.jp/kananchotte/kankogaido/terajinja/1394613320825.html)の墳墓が西行さんのお墓であると夢のお告げで知ることになるエピソードと繋がります。たぶん。私が西行さんを主人公にした漫画を描くように言われたらこの似雲さんを案内役にしますね。ツッコミ役の従者がいるといいかも。
ところでカタカナをやたらに使わずに文章を書けるようになりたいです…。
西行さんの業績や旅の様子を描いた絵巻などの資料がどんどこ出てくるのですが、その中に西行が崇徳院廟を訪ねたものがあり、涙がこぼれます。雨月物語の白峯(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%A8%E6%9C%88%E7%89%A9%E8%AA%9E#%E7%99%BD%E5%B3%AF)として有名な、恨みから異形の怪しに変化した崇徳院が法師として各地を行脚した西行との対話を通し、またかつてその才を愛でた西行の歌によって穏やかな心を取り戻す…という話です。諸説あるという西行の出家の理由はこの時こうして崇徳院の御霊を慰めるために観世音菩薩に導かれたとかでいいんじゃないかなもう。駄目? 御白河院があそこまでああじゃなかったら崇徳院もここまでならなかったんじゃないのかなと思うけど歴史を進めるために御白河・清盛・頼朝は外せないんだろうな…。(何目線か)
白峯寺からも「歌仙切 崇徳上皇像」が貸し出されています。よくぞ和歌山においでくだされた…。また拝む。
「願わくは」関連展示もありました。弘川寺全面協賛で、好きな人にはグッとくるんだろうなあ…と思いながらみていました。
その次は史実と伝承という展示で、絵巻になったり能になったり八面六臂の活躍ぶりです。ここでも白峯の絵だったり、成長した娘さんの穏やかな尼姿だったりが見られて和みました。ドラマであの幼い娘さんを振り払う場面辛かったですからね…。幼い子が出家の妨げになるというのはたぶん仏陀とラーフラになぞらえたフィクションかなと思うんですが…。
江戸時代に武家屋敷に置くのが流行った笑顔の西行さん人形とか、意味はよくわからないけど可愛らしいものもありました。何かご利益があったのかな。そしてこれが他のお坊さんではなく西行さんってことが資料とかに残されているんだよな…。花見の神様みたいな雑な扱いでも面白いけど違うだろうな。
西行さんが生きた時代の人から見た西行の文書資料が展示されて終わり。疲れからかこのあたりの記憶はありません。2時間くらいしかいなかったんですけどね…。体力つけたいです。
かなり偏った見方をしてきましたが、とても面白かったです。
私は疲れて見られなかったのですが、ロビーで絵巻の解説ビデオが見られたり、17日にも申し込み不要で無料の解説講座、23日24日にミュージアムトークがあるようなので、興味のある方はぜひ行ってみてください。(https://www.hakubutu.wakayama-c.ed.jp/saigyou/ivent.htm)
図録も郵送購入できます。(https://www.hakubutu.wakayama-c.ed.jp/syuppan.htm)
和歌山県立博物館に入館すると和歌山城天守閣とわかやま歴史館の共通入場券の割引券がもらえます。(発行から3日間有効)
また博物館に隣接した近代美術館も広々としてゆったりと鑑賞できるのでおすすめです。